2021.03.04-5錫杖岳1ルンゼ

会員用2
  • 期日: 2021/3/4〜5
  • 山域: 錫杖岳
  • 参加者: Y、H
  • 天候: 3/4晴れ、3/5雪・雨
  • 行程: ○3/4(木) 0630新宿駅-1030中尾高原口1100-1300クリヤ谷岩小屋1400-3・2・1ルンゼ等偵察-1640:1ルンゼ1ピッチ目-1800岩小屋 ○3/5(金) 0430起床-0600岩小屋発-0630:1ルンゼ取付-1320:5P目終了点-1500取付-1530岩小屋-1720中尾高原口駐車場

アルパインを始めた2年くらい前から何故だか良く分からないが強く惹かれていた冬の錫杖岳。中でも前衛壁を真っ直ぐに走る白い線は一際脳裏に焼き付いていた。挑戦するのは時期尚早かもしれないが、山屋の性分というべきか、登りたい気持ちを抑え切れずに初となる冬の錫杖へ行って参りました。

事前の情報では繋がっているのか怪しい……(特に1ピッチ目)。だが、行ってみないことには分からないという結論に達し、初日はルート偵察に当てることにしました。

○day1

中尾高原口には昼前に到着。一昨日は雨だったようで、雪はかなり少ないように思える。気温も5度前後で、もはや爽やかな春。スタートからすでに先行きが怪しくなってきた。

汗だくになりながらのアプローチ。半袖でも暑い…。

アプローチ序盤は殆ど夏道。心配されたラッセルも皆無。赤岳鉱泉へのアプローチを思い起こさせるような沢筋を行く。

まるでクライマーの為にあるような前衛壁。冬は至る所に氷がかかり、なおさら魅了的に思える。

渡渉ポイントで無事水没を免れて、暫くしたら前衛壁が見えてきた。1ルンゼは全体的に薄いような気もするが…。とにかく取り付きから見てみないことには分からない。

岩小屋。リングボルトがやたら打ってある。フカフカのマットが一面にあるので、自分はボルダリングでアップ。

錫杖沢出合を過ぎてすぐに岩小屋の幕営地点。予定よりだいぶ早く着いたので、ゆっくり支度してから偵察へ。途中、3ルンゼを登ったという下山中のパーティーとすれ違う。3ルンゼは雨で氷が落ちて、ほとんどドライだったようだ。1ルンゼは…「かなり厳しいのでは」とのこと(笑)。

3・2ルンゼを見学したあとに、目的の1ルンゼへ。ルンゼ内は音を立てて、水が勢いよく流れている。出だしの氷柱は見せかけ。触れただけで崩れ落ちるほどだった。

1ピッチ目は、ルンゼ内を沢登するのは御免なので却下という意見で一致。夏の1ピッチ目もフェイスクライミングになるので難しそう。何とか登攀ラインを探り、左にあるというエスケープバンドや1ルンゼ左、錫思杖戯のラインも探るが、どうやら1ルンゼの右側にあるクラックがいい感じだ。よく見るとぺツルのハンガーも打ってある。

ついでに注文の多い料理店も観に行く。秋に来た時よりも、核心がだいぶ近くに感じる。夏の1ピッチ目は殆ど埋まっているようだ。
背後には絶景。前衛壁へのアプローチも薮や樹林帯は埋まっており、ラッセルさえ厭わなければ夏よりも歩きやすかった。

偵察を終えても時間が余ったので、1ルンゼ右のラインを試登。上部は下からは見えないが、最悪途中ぺツルのハンガーで下降できるので、とりあえず登って探ることにした。

1P目50m。岩と草付きのミックス壁。5.7くらい?

ハンガーから上もクラックや立木があり支点は取れるので登れそう!凹角のワイドクラックを越える箇所が核心だった。1ピッチ目終了点はぺツルが打ってあるので、翌日の負担軽減の為にフィックスを張り、この日の行程は終了。

○day2

前日には確かにあったエセ氷柱は跡形も無い……。気温も高くなり、上から氷がどんどん落ちてくる。

1ルンゼ登攀は1ピッチ目の登り返しからスタート。朝は晴れ間を覗かせたが、まもなく雪がチラつき始めた。

2ピッチ目、40メートルほど。Y氏リード。出だしのワイド気味のクラック〜雪壁。傾斜は緩い。V字岩壁基部にハーケンがあるが、パートナーは3P目下部氷瀑の左側岩壁でピッチを切った。

3P目40m、Hリード。ここからようやく氷のセクションとなった。下部の氷瀑は一見して氷結が甘く、左端に確保支点を取っていたこともあり、左のルンゼから雪壁を20メートルほど進み右に回り込んで迂回。

3P目、上部氷瀑。写真は下降中。

上部の氷瀑は80〜90度ほど。10メートルほどと短いが、氷結はかなり悪く、薄くて甘い。適当にバイルを打ち込めば岩を叩き、アイゼンを蹴り込めば足元が崩れ落ちた。スクリューも13cmで2/3ほどしか入らず、落ちることは許されない。右の傾斜の緩いラインは氷が薄く岩が露出しているので、あえて氷結の良い傾斜の強いラインを選んだ。バイルが決まる箇所は探せば見つかるので、とにかく丁寧に、落ち着いて登ることを心がけた。しかし、あと少しで抜け口!という所で強烈なスノーシャワーをくらう。危うく持ってかれそうになるが、何とか堪えた。核心を越え、左端の少しテラスになっているところでスクリューで確保。幸い?21cmと17cmが完全に効いた。

噂通りスノーシャワーが頻発する。身体は洗われるが、心は…………(ちょっとテンション上がる)

4P目40m、Y氏リード。核心とされるピッチでWI5。下から見上げると傾斜は意外に緩そうで簡単そうに見えるが、登ってみるとやはり難しい。氷もシャーベット状で、バイルやスクリューが効いているか心許ない。左側の残置支点でハンギングビレイ。

ビレイ中は怖かった。スノーシャワーはもちろん、絶え間なく落氷(たまに落石も)が容赦なく襲ってくる。時折、自分の頭ぐらいの氷塊がブーン、ブーンと風を切り鋭い音を立てて落下してきて恐怖を煽る。氷は絶賛崩壊中といった感じだ(笑)。岩陰でだいぶ防げたのでまだ良かったが、もし真ん中でビレイしていたら一溜まりも無かっただろう。

5ピッチ目。核心の氷柱の抜け口付近。

5ピッチ目はHリード。出だしは雪壁気味の70度くらい〜右の岩とのコンタクトラインにあるハング気味の氷柱をテクニカル?なムーブで越える。ここは氷の質は最高に良いので、安心してムーブを起こせた。固め取りして、氷柱に取り付くが、左足を決めた太いツララが丸ごと折れて、足ブラになりかけながらも何とか突破。

上部は再び傾斜が緩くなり、10メートルほど進んで雪壁に移る。アイスのセクションはここで終わり。しかし、雪が深くて足を取られて進めない。右手でしっかりバイルを打ち込み、左でシャフトを雪面にしっかり差し込んでマントルを返すように越えようとするが、足元の柔らかい雪が崩れ落ち、最後の最後でフォール。直前の13cmスクリューが1本抜けたが、10メートルほど滑り落ちただけで止まった。岩壁に決めたカムがバチ効きしていたお陰で、氷柱の抜け口から落ちずに助かった。落ち着いてから登り返そうとするが、なんとバイルが片方無い!上に刺さったままかと思ったが、パートナーに確認したら「ノミックらしきものが落ちていったよー」とか言ってる…。リーシュを見ると、なるほどカラビナが破断していた!しばらく逡巡してリード交替か、あるいは敗退も視野に入れたが、傾斜はキツくは無いし、このままトップロープ状態で片手バイルで進むことにした。落ちた箇所も冷静に雪を踏み固めて無事抜けた。左の雪壁を10メートルほど進むが、片手には21cmのスクリューをバイル代わりにして登る羽目になった笑。

5ピッチ目終了点は広いテラスで残置ハーケンがあるが、心許ないのでカムで補強。上部はすぐに雪原。6ピッチ目は容易なようだが、自分は片方しかバイルが無いし、アイスセクションは全て登りきったはずなので、ここから下降することにした。何より全身ずぶ濡れで寒い!早く降りたかった。。

懸垂は同ルート下降。60メートル4回で取り付きまで。懸垂支点は割と豊富にある。降雪が続いているので、ノミックは埋まってしまっただろうと半ば諦めかけたが、無事1ピッチ目終了点付近で発見!200メートルほど落ちただろうか…。帰りを待っていたかのように抜け口に見事突き刺さっていた。

下山時には雪は雨に変わり、全身ずぶ濡れで帰還。平湯の温泉で冷え切った身体を温めてから帰途につきました。

・「本気の登攀をする」という目標を掲げてこの山行を計画したが、最初から最後まで緊張を強いられる期待以上の激しい内容となった。今回の場合は、綺麗なアイスクライミングを求めているなら他のルートに行った方がいいと思うが、アルパインクライミングの対象としては最高の機会を与えてくれた。

・個人的な感想だが、ゲレンデアイスの経験だけでは完登は難しい、総合力の求められるルートだと感じた。少なくとも自分にとってはフリー、トラッド、雪稜など、ここ1年くらいで蓄積してきた経験が全て活かされた。

・1,4ピッチ目が核心と言われることが多いようだが、自分の体感では1ピッチ目はともかく、3.4.5ピッチ目は同程度の難易度だと感じた(4ピッチ目はリードしていないが)。ただし、上記の通り性質はそれぞれ全く異なる。

・使用ギアは、スクリュー15本(実際に使ったのは10本ほど)・キャメロット0.4〜5(0.5〜3は2セット、4.5などは未使用)・トライカム(ほぼ使ってない)など。カムは側壁などにバチ効きポイントが多数あるので、非常に有効だった。ただし1P目以降は1セットあれば充分。

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