2022.3.17-19 グランドジョラス北壁 Petit Macintyre

山行報告

天候:晴れ  

参加:穴井(投稿)、T石(会員外)

コースタイム
3/17 9:50 Chamonix駅 10:30 Montenvers駅 11:00 Mer de Glace氷河歩き 17:00 レショ小屋
3/18 5:00 レショ小屋 12:00 Petit Macintyre取り付き 23:00稜線トップアウト →同ルート下降
3/19 5:00 取り付き 9:00 レショ小屋 12:30 Montenvers駅 13:30 Chamonix駅

レショ小屋から北壁を眺める
左端に切れ込む凹角状のアイスルート Petit Macintyre 700m TD

アイガーから降りて一日のレスト日を挟み、2本目はジョラスへアタックすることに。19日の夕方にはコロナのPCR検査を受ける為にジュネーブに戻る必要があった為、少々強行日程ではあるが一度はトライしてみたかった壁なのでテンションは高かった。アプローチはメールドグラス氷河からスキーの為、前日にintersportでスキー板をレンタル。ルートはT石さんと相談し、walker稜は時間がかかるので、Croz spurルートを登る予定で計画を進めたのだったが。。

Montenvers駅からドリューを眺める

17日はアプローチ。シャモニー駅からモンテンバース鉄道に乗り、モンテンバース駅までは30分ほど。3月のスキーハイシーズンともあって乗客は満員御礼、これでもかというくらいすし詰め状態の登山電車は車内の喧騒とは裏腹にガタンゴトンと心地良い音をならしてゆっくりと標高を上げていく。谷の反対側のプレバンの山並みが綺麗だった。

駅に着くと真正面にドリューが堂々と聳えていてテンションが上がる。無料のロープウェーに乗って少し下まで降り、さらに階段で氷河の底まで歩いていく。途中の壁には氷河がどの高さまで残っていたかが年代毎に分かるような木版が飾ってあった。温暖化の影響で年々氷河は下がっているようで、ここ20年足らずでも何十メートルも下がっていて驚いた。

氷河に降り立ってからはスキー板を履いてひらすら歩く。上からはミディ方面からスキーツアーの老若男女が絶えず楽しそうに滑走してくるのだが、我々は大荷物を背負ってひたすらに歩いていく。20年振りくらいにスキー板を履いたのだが、これが大失敗。すっころんでまともに歩くのにも難儀していると、レンタル靴が靴擦れを起こして、悶絶ものであった。

モンテンバースから4時間ほど歩いてようやくグランドジョラスが見えてくる。威厳を保った佇まいで、迫力満点だった。壁がデカい。

ちょうど壁が見えたあたりで左側の氷河の壁に200mほど梯子が掛かっている。レショ小屋への上がり口だ。ノーロープで上がったもののまるでヴィアフェラータのようなトラバースもあり、途中、2級ほどの岩場も出てきて少し怖かった。途中で追いつかれた2人組がスキー板を担いで上がっていったので、また降りるのにわざわざ持って上がるのがマナーなのかと、悪態をつきながら持って上がって小屋で話をしたら、彼らは更に小屋から上に抜けるとのことで笑われてしまった。明日の暗い時間に出発することを考えて、スキー板をまた下にデポしに降りたりしていたらすっかりいい時間になってしまった。

小屋の中は暗かったが、毛布に2段ベッド完備で非常に快適。先に上がった2人組に話かけると、シャモニーのスキーパトロールとのこと。予定を尋ねられ、北壁と答えたところ、今年はやはり雪が少なくスーパードライなコンディションだと教えてくれた。
夕食はT石さんに準備してもらっていたドライフーズのパスタを流し込んだ。アイガーで食べたオートミール味は頂けなかったが、今回のビーフ味は美味しかった。足がズキズキと痛むので靴下を脱ぐと、靴擦れが悪化し両足首が血まみれに。えぐれていて悲惨な状態になっていた。スカルパのスキーブーツは細くて足に合わなかったみたい。ここまで来てどうすることもできないので、テーピングでグルグル巻きにして見なかったことにする。
コーヒーを飲みながら出発前に選定しておいたCroz spurルートの取り付きをチェックして眠りに着いた。

18日は4時に起床。朝一から小屋から続く梯子を下りて、氷河でスキーを履く。足首が激痛で今すぐにでもスキーブーツを脱ぎ捨てたくなったが我慢する。小屋から取り付きまではアプローチ2時間と書かれていたが、シールで急斜面を壁に向かって詰めていくとクレバス帯にぶつかってしまった。どうやら迂回しないといけないようだ。どうにかクレバスの隙間を縫って正面突破できないか彷徨ってみたが、どうしても超えらそうにないので、一旦斜面を降りて大きく左から壁の基部に沿って大回りすることにした。※後で小屋に戻ったときによく観察したところ、右から回る必要があった。

左から壁の基部を回り込んでみる。正面のスカイラインがwalker稜。クレバスが幾重にも重なる。

せっかく詰めた斜面を降りて、大きく左から回りこんでみる。この時点で4時間ほどタイムロスしており、日が高くなってきた。途中でスキーをデポしてつぼ足で壁に近いていくと漸く壁沿いの氷河の様子が見えてきて、愕然としてしまった。早朝に正面突破しようとしていた先にも幾重にもクレバスが開いていて北壁の正面付近まで近づくのは非常に困難に思われた。時間も正午に迫り、2人で作戦会議し、時間も残されていない為、残念ではあるが手ぶらで引き返すわけにもいかず、至近のPetit Macintyreルートを登ることにした。

ルート下部全景。下部の雪壁から凹角に沿ってひたすらアイスセクションが続く。下から見ると短いように思われたが、取り付いてみると意外に長いルートだった。(上部が見えていなかった。)

12時前にクライムオン。下部の雪壁を除雪も交えて突破したらひたすらアイスを伸ばしていく。簡単ではあるが単調でふくらはぎに堪える。

アイガーと違って花崗岩の白い岩が綺麗だった。下部はアイスセクションが延々と続く。正午から登り始めたので暗くなるころには降りれるかと思っていたが、短いルートとはいえ北壁はそう甘くはなかった。

高度を上げるにつれ、日が陰り風が出てきて冷える。上部は徐々にドライな感じで氷が途切れてくるようになり、プロテクションに難儀する場面もあった。

時折、スカ雪や吹き溜まりをこなしていく。すっかり日が暮れてしまい今夜も残業となった。上部は岩やチムニーセクションが少しは出てきて変化が嬉しかった。氷が結構割れて落ちてくるのでフォローの機嫌が悪くなる(笑)

稜線はまだかまだかというはやる気持ちを抑えながら、チムニー状のセクションをこなしていくと23時頃にようやく稜線付近にトップアウト。結局、テムレス一枚でこなしたせいで少し指が凍傷気味になっていた。月夜に照らされる稜線の向こう側からは猛烈な風が巻き上がっていて、早く降りたほうがよい雰囲気。

ウトウトしながらの下山は同ルート下降で懸垂15発、取り付きまでほぼアバラコフで降りれた。途中、側壁に決めた2番カムがスタックしてしまい、回収に難儀してしまった。

4:00に取り付きへ戻り、途中のスキーデポ地点で板を履きシールを外して滑降していく。急斜面を転びまくりながら小屋まで戻ったおかげでターンを覚えた。T石さんも久しぶりのスキーとのことで傾斜があるところは二人して転んだ。小屋にデポした荷物を回収にまた長い梯子を登り、レショ小屋に戻る。あまりにも眠いので少しばかり仮眠を取ることにした。

ふと目を覚ますと11時を回っていた。今日は16時のバスでジュネーブに戻らなければならず焦って荷物を纏める。小屋からの帰りはモンテンバース駅まで心地よい走路が続く。この日はよく晴れていて、疲れも相まってまだ眠かったのだが、足首の痛みもいつの間にか忘れて景色を眺めながらスキーを楽しめた。

14時頃にはシャモニーの街に戻る。痛む足を引きずりながらintersportへ向かい、レンタルスキーを返却。借りる時にも対応してくれた若い店員さんからスキーブーツはどうだったか、スキーツアーは楽しめたかとしきりに尋ねられたので、履き心地もツアーもパーフェクトだったと伝えておいた。
アパートメントに戻り、シャワーを浴びて急いで荷物を纏めた後は、この後も残るT石さんにお礼と別れを告げて、16時のバスでシャモニーを後にした。
あっという間の弾丸ツアーであったが、2本とも何とか完登することができ、良い山行になりました。誘って頂いたT石さん、アドバイス頂いた会の皆さんに改めて感謝です。

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