メンバー:海保(投稿)、吉武
天気:晴れ
行程:2024/05/02 04:45 Camp4発(車移動)- 05:00 Parking-Zodiac Talus- 06:00 El Capitan基部(Zodiac取付部)-7:40 East Buttress 登攀開始- 13:00 8ピッチ地点(滝水で敗退) 下降開始-15:30取付-17:30 Parking
Rack:Nuts1set, Cams #0.2~#3 2set, #0.1 #4-#5 1set, 捨て縄 5m, スリング 60x2,120x2,180,240, ヌンチャクx6,アルヌンx4
ヨセミテ行きが決まってから短い滞在日数の中1dayで登れそうなEl Capitanのマルチルートの“East Buttress”が気になっていた。
ヨセミテ滞在2日目Cookie Cliffでショートルートを登った帰り道にその想いを悟ってくれたのか吉武さんから「行ってもいいですよ。」と話をふってくれて“East Buttress”へ行くことになり、テンションが上がる。
“East Buttress”は、故杉〇氏のおススメルートの一つでもあり、ルートコメントには「ランナウトを強いられる、ラインが複雑、ワイドが多くスリッピー、脅すわけではないが10台のクラックは余裕持て登れる人向け」とあった。これにしっかと脅されて前日偵察へ行くと、壁がキラキラと光っておりよく見てみるとルート左にある滝の水が風に飛ばされて、岩が濡れていた。
「明日は風が無ければ、濡れないかもしれない。」とわずかな期待を持ち、取り敢えず行ってみることにする。
5/2
レンタカーが1台しかないため、East Buttress組に合わせて他のメンバーも4:15に起床し駐車場まで送ってくれた。(みなさん有難うございました。)
5:00頃の薄暗い中駐車場を出発し、ガレ場になっているZodiac Talusを辿る。徐々に空が明るくなり、6:00頃に El Capitan基部(Zodiac取付部)に到着。
East ButtressはEl Capitanの最右端のルートなので、右へトラバース。どん付きと思った地点にクラック状になっている岩棚があり、ここを登ってみるが明らかにルートが違う。後で確認したところLost in Translationの取付きのようだった。
早々に懸垂で降りて更に少し右に行くと、1ピッチ目の顕著なチムニーの取付きがあった。前日の偵察で心配していた滝の水は真下に落ちてくれていてルート上は乾いていたので登ることに。
1P目 5.8wide~5.9stem 吉武
7:40頃登攀開始。リードはしないと言っていた吉武さんが1ピッチ目からリード。ワイドを登り始めて早々に上から「たのしー!」と岩に挟まった人の声が聞こえてくる。
プロテクションが取れない中、徐々にロープを伸ばして終了点へ。フォローはザックをずりずりし、穴をあけながら登った。ワイド途中の薄いスリットに#0.1が決めてあり、こんなので良く突っ込んだなーと思わずニヤける。終了点の直下も難しく、必死の思いで体を上げて1P目終了。終了点はハーケン複数あり。
2P目 10b face~5.9 fingers 海保
このピッチがグレードとしては核心。右のクラックに#0.2を決めるが微妙。これは落ちられないなと思いながら、思い切って一手出し、スローパーピンチを抑えて、次のフィンガーでフェイスを超える。その後は溝状のフィンガーセクションが続き、このピッチもとても楽しい。終了点は木でスリングあり。
3ピッチ目 5.6 Hand 吉武
快適なハンドを登り、テラスにあがってピッチを切る。
4ピッチ目 5.6 Face~arate 海保
フェイスから左へトラバースしてカンテを登る。ノーズが見えて気持ち良く登れる。終了点はハンガーあり。
5ピッチ目 4th class 吉武
左手にはノーズ、右手にはハーフドームが見える贅沢な景色の中、岩棚をあがっていく。少し左に回り込むとガリーがあり、ここでビレイ。
6ピッチ目 5.8 海保
ガリーを右に詰め上がり、フェイスを左にトラバース。プロテクションが取れず、カチホールドでのトラバースで意外と悪い。終了点ハンガーあり。
7ピッチ目 5.7 吉武
更にガリーを登っていく。
もうすぐ半分。登攀開始から3時間程、「良いペースで登れているな。明るいうちに降りられるかな」と思いながらビレイしていたところ、空から水がポタポタと降ってくる。
左側にある滝の水が風に乗って飛んできているようだ。「今日は天気も良くて、風も無いから今日で良かった。」と話をしていた矢先に、みるみるうちにガリーが小滝のようになっていく。ロープも動かなくなりリードも苦労しているようだ。空からの水がポタポタからバタバタに変わり、レインウエアを着こんだ頃、ビレイ解除のコール。
ホールドはどこも濡れており「これは沢登りだな」と気持ちを入れ替え、急いでフォローで登っていくと、ルーフ下で流水を避けながらビレイしていた。対岸にはまだ雪も残っており、濡れると結構寒い。
8ピッチ目 5.8 Roof 海保
小ハング越えのクラックに手を伸ばすと、袖から水が入ってきて、パンツまでぐっしょりになった。滑りそうなホールドにステミングしながらハングを越えると、ルートの丁度半分程にある鼻状の岩の上のテラスに出る。西面側に回り込むと滝の水しぶきを避けられて、日も当たるので暖かい。ピッチを切って、セカンドに上がってきてもらう。
9ピッチ目 ビレイ点で敗退(トポ上は6ピッチ目?)
この先のピッチはワイドクラックになっており水が流れている、その後にランナウトのトラバースのピッチがあるはずだが、水が反射してラインがよく分からない。
「敗退するならここかな。でも時間的にはまだ余裕ではあるな。」と上を見上げてルートを探っていると、後ろから「一旦、お昼にしましょう」と促され、小休止。
(後で聞いたところ、ここで一度止めないとすぐに登り出しそうな顔していたとか。)
エル・キャピタンとハーフドームの景色を交互に楽しみながら少しまったりする。
滝の水は弱まる気配もないし、びしょ濡れのビバーグはリスキーだなということで、ここで敗退することにして、ピナクルで懸垂下降開始。
途中ロープが引っ掛かり本日2回目の核心ピッチを登り返し、エル・キャピタンの端っこを最後まで満喫し、15:30頃に取付、17:00頃に駐車場へ到着。他メンバの皆さんにピックアップに来てもらいました。(度々有難うございました。)
敗退は悔しかったですが、どのピッチも気が抜けない面白いルートで充実したクライミングになりました。一緒に登ってくれたパートナーに感謝です。
帰りはビューポイントのトンネルビューへ行ってみんなで記念撮影。
敗退原因となった滝の名前は「Horsetail Fall」。春先や大雨が降ったときのみ現れるそうです。Horsetail Fallが現れたときは風向きにもご注意を!
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