- 参加者: 平井
- 行程:0910不動尻ー0940不動滝ー1116登山道ー1136不動尻
地元、七沢の自然をこよなく愛する私にとっては恒例である不動尻のミツマタ群生地への散策。
今年は、そのすぐ傍らに小粋な美渓があるという僥倖を聞きつけたもので、毎年のささやかな愉しみに、山屋らしい彩りを添えてみました。
なぜだかは分かりかねますが、県内有数の心霊スポットと云われる山神トンネルを抜けて不動尻に至る。
これだけ大勢の人々が行き交うなかでは、亡霊たちもさぞかし出不精になってしまうでしょう。
不動尻のミツマタは満開のようだ。
ショートケーキの苺は後に残しておきましょう。そそくさと入渓点となる不動滝へと進みます。
先ほどまでの喧騒から離れてゆき、つづら折りになった谷の、やわらかな風と細い水の流れをゆっくり遡ってゆきます。
丹沢の麓にも花の便りが続々と届きはじめましたが、木々に緑さすのはもう少し先のことのようです。
高みに至るにつれて、寂寥とした風景ばかりが際立っていく。この時期の山登りにだけ当てはまる話なのだろうか。
”旅に病んで夢は枯野をかけめぐる”
もうすぐ四月だというのに、そんな名句がなぜかしきりに頭を過ぎりました。
白滝。落差20mほどの立派な滝だ。左の残置ロープから高巻く。
最後の関門。苔スラブ8m。直登すれば5.10aくらいはあるだろうか。粘ったが登れなかった。
これを巻くために、二つほどの滝を下って左岸より脱渓。25分ほどのツメで登山道へ合流。
この道すがらクマを見かけた。不動尻に戻り靴を調べると山蛭の姿も。
啓蟄が過ぎて、早くも冬の眠りから目覚めたようです。彼らに春眠暁を覚えずという言葉は無縁なのでしょう。
抗ヒスタミン薬の副作用か、日中もうつらうつらと白昼夢に耽ってばかりの私からすれば羨ましい限りです。
ミツマタはその名が示す通り、何度枝別れしようとも、必ず三つ一組になるようだ。
たしかに、枝の途中からおわりへと目を移していくなかで、ずいぶん仲睦まじいものだなと何度も感心していました。
気の置けない友人たちがいるのであれば、ここで花見酒となったのは必然だったのでしょうが、今回はひとりなので、そっとミツマタ畑を後にしました。
帰り道、花の名に疎い私も、ファインダー越しに道端を覗き込む方々の真似をしてみますが、なるほど目を凝らせば、小さな花がそこら中から顔を出していました。
毎週末の行脚も大変良いのですが、たまには足元の草木に目を遣ってやるのも悪くはないものです。
みなさんも分厚い外套をいったんタンスにしまって、春の息吹を感じにお近くの野山へと訪ねてみてはいかがでしょうか。
ついでに私は、百代の過客らの落とし物をちょっとだけザックに背負い込んで、ふざけすぎた季節から一歩踏み出してみることにしましょうか。
記: 平井
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