- 期日:2020-10-3 ~ 4
- 山域:南アルプス 甲斐駒ヶ岳
- ルート:赤石沢ダイヤモンドフランケ Aフランケ 赤蜘蛛ルート/スーパー赤蜘蛛
- 参加者:L.瀬沼、海保、穴井、上荒磯、鈴木た(投稿)
- 行程:
10/3 ガスのち曇り 竹宇駐車場7:50–12:45七丈小屋13:00–13:45八合目岩小屋、14:00~15:00偵察10/4 曇りのちガスときどき雨 八合目岩小屋4:00-5:00取付6:40-10:20大テラス13:10-18:05Aフランケの頭岩小屋18:15-18:40八合目岩小屋19:10-23:25竹宇駐車場 (時刻は最後尾)
来年で初登から50年になるAフランケ赤蜘蛛ルート。
今回、瀬沼さんの呼びかけで集まった参加希望者はなんと8人!残念ながら3人は日程の都合がつかず断念したものの、5人でワイワイ登ってきました。
海保-穴井組:スーパー赤蜘蛛をフリーでトライ。
瀬沼-上荒磯-鈴木組:オリジナルの赤蜘蛛をなんでもありで。
この週末の入山者は、ledge to ledgeでスーパー赤蜘蛛に挑むツヨツヨクライマーのお二人と我々の、2パーティー計7人。
ツヨツヨのお二人に八合目の岩小屋を譲っていただき(ありがとうございます!)、荷物を置いてアプローチを偵察に行く。
Aフランケへの踏み跡はよく踏まれており、昼間ならほぼ迷うところはなし。
Aフランケの頭で右手へ折れる踏み跡(Bバンド)に入ると、1分ほど下った左手に終了点の岩小屋がある。
取り付きへはこのバンドに入らず、左手の八丈沢側の急斜面をからんでゆく。まもなく第三の岩小屋。踏み跡はさらに八丈沢へと下っているが、このぶんなら迷うところはなさそうなので、この岩小屋に登攀具をデポして引き上げた。
富士山、北岳、鳳凰三山を眺めながら軽く入山祝いを執り行い、早めの就寝。
高曇りで冷え込みもなく、快適な朝を迎えた。この天気が続いてくれることを祈りつつ出発する。
第三の岩小屋で装備を回収、八丈沢に降り立って間もなくで右へ回り込み取り付きを目指す。フィックスロープのおかげでロープを出すことはなかったが、岩壁の基部に出てからが想像以上に長く、こんなに下って大丈夫かなと不安になってきたころ取り付きへ到着。
Aフランケの頭までは長い行程になりそうだ。
明るくなるのを待ってレッドポイント目的のお二人に先行してもらい、我々もフリー組、人工組の順に後を追う。
1p目、見た目以上に細かいフェース。海保さんは順調にフェースへ移るも、スタンスに弾かれ惜しくもフラッシュならず。
一方の人工組は前評判どおり出だしのハング越えで苦戦。ジムで柴田さんに特訓していただいた甲斐あってハングに足を突っ張ると次第に安定してきて、どうにか2ピン目を掛けることができた。あとは掛け替え。
2p目、コーナークラック。祈りもむなしく時折雨が落ちてきて滑りやすいが、人工組のはるちゃんもしっかりフリーでリード。
3p目、消えゆくクラック、小ハング下まで。濡れていて、次のピッチの前半ともどもシビアなフリーだったようだ。人工組はひたすら残置を辿る。
4p目、小ハング下のボルトラダーから左に出て、次のビレイポイントを見送りV字ハング越え。
V字ハングは見た目ほど難しくないと聞いていたので、私もフリーでトライするつもりでいたのだが。
・・・気がついたら体が勝手に動いてアブミに乗っていた。
おまけに、一動作ずつ確実に高度を稼いでいる満足感。繰り返しているのはゲレンデと寸分変わらぬ動作なのに。
むむむ。。なんだこの違和感は。
そういえば、2週間前の屏風でも同じ感覚を味わった気がする。
手当たり次第に残置をつかんで登ったあの日―――
荷物が重いから、3人パーティーだから、濡れてるから、時間が押しているから、怪我するわけにいかないから… 口実はいくらでも思いつくが、無数にある残置支点に頼ってぶら下がって登っているという情けなさだけはどうしようもない。
けれどもそんな葛藤をよそに、残置は次から次へと眼前に現れ、それに背を向けて登る技量も度胸もない己の姿を映し出す…
名クラシックとうたわれ、一度は登ってみたいと思っていたこの壁を、そんな気まずさを抱えて登らなければならないとしたらやりきれない。
とりあえず、大テラスへ転がり込んで心を落ち着けよう。
気が付けば壁の真ん中まで登っていた。
クラックというクラックに藪が生えているなか、中央の「ホットライン」のクラックだけはすっきりしているようだ。フィストくらいかなーと思ったが、帰ってトポを見たらオフィズスとのこと。壁の大きさに惑わされてスケール感がまったくつかめない。
スーパークラック方面からは先頭パーティー、続いてフリー組の、気合と絶望の雄たけびが交互に降ってくる。
あいにくここからでは登っている姿を拝むことはできないので、ひたすら寝て体力温存に努める。
5p目、いよいよ看板ピッチの基部へ。
6p目。上のビレイ点が空くまで待つこと小一時間、先ほどまでの迷いは消え、かわって夕闇の気配が忍び寄ってくる。人工組も離陸。
トップはカム2セットでリード。
フォローは2人で1セットを持ち、足りない前進用ギアは二人三脚で使いまわして瀬沼さんの待つビレイ点を目指した。
岩はカチカチに硬い。カムがガタついてアブミに乗るのがおっかないって? 怪しげなリングボルトに比べたらよっぽど安全だよ!
スーパークラックを抜け、8p目のスラブを登るフリー組。二人とも本気のクライミングでフリー突破。5.10bなんかじゃない!とのこと。
7p目、恐竜カンテを乗越して壁の頂点へ。
バランスを崩さぬよう立ち上がり、アブミをかけ、乗り込んで素早く回収、次をかけやすい側を考えながら立ち上がり、次の支点へ…。
無駄な動作を減らし、前進することに集中していると、人工登攀の妖しい快感がまた蘇ってきた。
8p目、ブッシュと夕闇のなか、なんとか問題のスラブを発見。迷わず人工で這い上がる。25mで木の生えたテラスに辿り着きピッチを切る。
ここで完全に日が暮れた。壁の中で真っ暗にならなくて助かった。。
コンテに切り替え、闇の中から現れる垂壁にビビりつつ巻き道を見つけてAフランケの頭へ。
八合目岩小屋でフリー組と感動の再会を果たし(2時間お待たせしました!)、あとは長い長―い黒戸尾根を下るだけ。最後は亡霊の行列のように足を引きずりながら、なんとか下山したのだった。
お疲れさまでした!!
最後に、ブログを書かないまま二週間が過ぎてしまった感想を少々。
あれだけのスケールの壁を、ときに和気あいあいと、ときに真剣なトライを間近に見ながら登れた時間は最高に贅沢だった。
でも同じスタイルでもう一度登るかと聞かれたら、そこはノーと言いたい。
これまで私は、フリーか人工かという選択は、もっぱら厳しいスタイルで登ったほうがエライという文脈で捉えていて、そりゃエライのはわかるけど、正直ヘッポコはヘッポコなりに楽しんだっていいじゃないの、と思うことも少なくなかった。
けれども今回の山で、(少なくとも残置をあてにして)人工で登るより、フリーで登ったほうが楽しいんじゃないか、楽しいからフリーにこだわるんじゃないか、という、文字にしてみれば当たり前の発想に気づくことができた。ヘッポコにもそう思わせてくれるAフランケ赤蜘蛛はやっぱり名ルートだ。
月イチクライマーどころか、近ごろは月1回のゲレンデ行きもままならない私だが、これからは心を入れ替えて(?)フリーの技術を磨こう。そしてまたAフランケに戻ってみたいと思う。
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