2022/5/4-6 槍ヶ岳西稜

山行報告
  • 期日: 2022/5/4-6
  • 山域: 北アルプス 槍ヶ岳
  • ルート: 槍ヶ岳西稜
  • 参加者: 平井、小林大
  • 天候: 晴れ、-1/5℃ (5/5槍ヶ岳山荘)
  • 行程: 5/4(水) 0700新穂高温泉駐車場-0845白出沢出合-0945滝谷出合-1100槍平小屋-1500槍ヶ岳山荘 5/5(木) 0500槍ヶ岳山荘-0520小槍取付-0620大テラス-1140小槍山頂-1500孫槍山頂-1640槍ヶ岳山頂 5/6(金) 0640槍ヶ岳山荘-0940滝谷出合-1220新穂高温泉駐車場
  • 装備: 50mハーフロープ×2・クイックドロー×15程度・キャメロット#0.3~4/1セット(0.3〜0.5は×2)・ナッツ・ハーケン×3・ワートホッグ×1(未使用)・トライカム各種(未使用)・ほか長めのスリング等

かねてより積雪期における憧れであった本ルートの登攀。今季、冬壁を幾つか経験し、確かな自信と心強いパートナーを得て、満を辞して挑戦してきました。

5/4水 新穂高温泉〜槍ヶ岳山荘

新穂高温泉駐車場に車を止めて、槍平経由のアプローチを選択した。アルペンチックな上高地からの登山道と比べると、やや退屈だ。

雪は白出沢を過ぎた辺りから目立つ様になる。随所にデブリが現れ、ラビーネンツークを横切る場面があるが、雪質は比較的安定してるように思える。

槍平小屋

槍平を越えると水場は無い。飛騨沢の広大な雪渓を通過する際には、もれなく強烈な日差しが伴うので、しっかりと水分補給をしていった方が良さそう。

飛騨沢

富士登山を思わせる冗長な飛騨沢の登高を終えて、15時過ぎに槍ヶ岳山荘へ到着。ゴールデンウィーク中日ということもあり、かなりの登山者で賑わっていた。

今回は小屋泊を選択したが、快適の一言に尽きる。山ヤを名乗るには余りに楽をし過ぎだろうか…。

缶ビールはなんと¥300と破格!

5/5木 槍ヶ岳西稜登攀日

登攀日当日は、前日までの昼過ぎより天気が崩れる予報が好転したようだ。外に出ると快晴・無風。気温も低くは無い。言い訳無用の絶好のコンディションのなか、さあ出発だ。日の出とともに槍ヶ岳山荘を後にする。

登山道を5分ほど行き、小槍が望め、最初の梯子が現れる左のルンゼから降りる。雪はクラストしており、急傾斜だがロープを出すほどでは無い。

青禿を望む

10分ほどの下降を経て、青禿のピナクルの基部へ。大テラスへは、ここを目印に地形を想像し、適当に当たりをつけて、取り付き易そうな所から小槍の側壁を上がる。要ビレイ。

1P目 小林大リード

出だしはⅢ級程度のクライミング。50メートル一杯にロープを出す。凍った草つきが多く、今回は使わなかったがワーティーが有効に思えた。大テラスと思しき箇所は見当たらず、さらに1ピッチロープを伸ばす。

2P目 平井

左方向へクライムダウン気味にトラバース。すると左下方に綺麗な雪田を発見。頭上を見上げると、くの字ジェードルが口を開けて待つ、威風堂々たる岩壁。これだ。残置ハーケンの終了点らしき箇所でビレイ。懸案だった大テラスへのアプローチは無事完了。ここまで順調だ。

小槍1P目 M5+ 30m 小林大

さて、いよいよ小槍の登攀だ。出だしのスラブは際どい立ち込みが要求される上、プアプロでいきなり厳しい。ハング気味の凹角に入る所が第一の核心か。ここは落ち着いてスタンスを拾い、トルキングをしっかり効かせられれば問題なかった。

しばらく右上し、凹角が屈折するセクションは米粒程のスタンスしか見当たらず、嫌らしい。フッキングが外れないことを祈り、上半身のパワーで身体を持ち上げる。リードは安定してノーテンで越えて行き、さすがだった。

小槍2P目 Ⅲ+ 30m 平井

スッキリしたフェイスを直上し、ジェードルの基部まで登る。Ⅲ+というが、傾斜は強く、全く気の抜けないピッチだ。上部は浮石も多く、ホールドの選択やプロテクションワークも頭を使う。

2p目フォロー 小槍の陰影が雪面に浮立つ

小槍3P目 くの字ジェードル M5/5.9 50m 平井

順番的には大善さんだが、核心は公平に、ということでリードを譲って頂く。出だしのワイド数メートルが実に厳しい。だが、極端に難しいというよりは、体力と気力勝負を強いられた印象だ。

クラック内の細かいホールドにフッキングしたり、バイルを無理やりスタックさせるなど、試行錯誤してフリーに拘るが、結果的には各駅停車で何とか上がれるくらい。ピンはかなり豊富に打ってあるので、クイックドローは多めが良いだろう。残置無視の場合はC5~6が必要か。

くの字屈曲部より上部は一転、クラック内に氷が詰まっており、束の間の楽しいミックスクライミング。終了点には残置ハーケンあり。

小槍4P目 Ⅲ 50m 小林

ハング下を右にトラバース〜フェイスを登り、小槍のピークまで50メートル一杯に伸ばす。ここでは、コールが全く届かず、無線機も通じないというトラブルがあり、小1時間ほど無駄にしたものの、正午前には小槍の頂上に立てた。ここまでは順調だが、ピッチ数にすると半分だ。先はまだまだ長い。

小槍のピークにて

小槍からは40メートルほどの高度感のある懸垂下降。コルまで降りるはずだが、更に下方の安定した雪田まで降りてしまい、登り返しも面倒なので曽孫槍は巻くことに。

コンテで適当に右からトラバースし、孫槍・曽孫槍の間と思われるルンゼから上がる。大善さんリード。

曾孫槍、トラバース部

ここは触れたホールドが全て崩れるくらい脆く、嫌らしいピッチだった。素直に曽孫槍を登っていればずっと楽だっただろう。

トポをろくに見ずに勘のまま突っ込む自分の悪い癖に反省だ。

さて、一難去り、無事に孫槍の基部に復帰。ハンガーボルトのビレイステーションあり。

孫槍1P目 Ⅳ級 30m 平井リード

明確な弱点は無さそうだが、何処からでも上がれそうだ。自分は左端のハーケンが散見されるフェイスのやや右にラインを取る。

出だしは凹角のハング気味を越えるが、傾斜はステミングで殺せるし、支点もカムやナッツで豊富に取れるので問題ない。

孫槍1p目、フォロー

上部は快適なフェイス。ピナクルまでロープを伸ばしてビレイ。やや浮石が目立つ。

孫槍2P目 Ⅳ級 30m 小林

明るく、快適なフェイスを孫槍のピークまでグイグイ進む、実に爽快なピッチ。今までの登路を含む絶景を背にし、個人的にはハイライトのひとつだった。

陽が当たらず、バイルでの厳し目な登攀を強いられた小槍の登攀とは好対照で、孫槍は明るく快適なフェイスが続く。グレード感も易しくなった印象だ。やや脆いが、ガバが多く、場合によっては手袋でも問題なく登れた。

孫槍より15mの懸垂下降

孫槍からの下降はピークの左右両側に支点があるが、今回は向かって右から下降した。大槍の基部へ、ルンゼを降りすぎないように注意する。

大槍1P目 Ⅳ級 30m 平井

大槍1p目。向かって右のリッジから回り込むラインを取った。

右上方に立派なハンガーボルトの終了点があるが、そこまでは登らずに右のリッジ〜脆い凹角を上がった。容易なピッチだが、途中、ランナウトするなか、細かい立ち込みが要求されるスラブがあり、良いスパイスになった。流れが悪くなり適当にピッチを切る。山頂まではあと少しだ。

大槍2P目 Ⅲ級 30m 小林

登山道をすぐ右下に見下ろし、少々興醒めだが、落石に注意しながら山頂までのビクトリー・ロードを行く。終了点は山頂のど真ん中という贅沢なエンディングだ。自分は最高の形で、夏冬通じて初の槍ヶ岳のピークを踏むこととなった。

ここまで登攀時間10時間強の長丁場となったが、筆舌に尽くせぬ達成感と充実感。

下降も槍ヶ岳山荘まで目と鼻の先で安心だが、余韻に浸りつつも緊張感を切らさずに下山した。

日本を代表する秀峰の懐で、これだけ充実した登攀内容を提供し、また絶好のロケーションのなかでクライミングを楽しめるとは、まさに第一級のルートと呼ぶに相応しいのではないだろうか。

今回は残雪期で、しかも最高の気象条件に恵まれたなかでの登攀であったので、”厳しさ”という点では些か物足りなかったかもしれないが、憧れのルートを良い内容で登りきることができて、とにかく良かった。強力なパートナーに感謝。

記:平井

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