- 期日:2022-04-29 ~ 5-1
- 山域:北アルプス
- ルート:剱岳 東大谷中尾根
- 参加者:CL鈴木(投稿)、SL阿久津、海保、中村、小林大、穴井由、加藤、吉武。
- 天候:雨と雪。 中24時間だけ快晴
- 行程:馬場島→立山川→東大谷→富高ルンゼ→東大谷中尾根→シシ頭→早月尾根→馬場島
天気の悪かった連休前半。気圧の谷に挟まれた晴れ間をつかまえ、一度は行きたかった東大谷中尾根に行ってきました。
ボロボロのヤブ尾根と侮るなかれ。見たことのない新鮮な眺めがこれでもかと現れ、剱の奥深さを改めて感じることができました。剱好きなら外せない名クラシックですね。岩は本当に脆いですけど。
1日目。
昼から雨の予報なので、今日は馬場島泊まり。
新潟県に入る頃からポツポツ。馬場島では本降り。
警備隊に挨拶に行って航空写真を見せていただき、立山川の雪渓が割れ始めていることはわかったが、ゴルジュの中まではわからず。ますます強まる雨脚に不安が膨らむ。
濡れる前提でベースキャンプ用のテントを持ってきたけれど、結局馬場島荘に転がり込んでお世話になった。
温かい布団、濡れずに支度ができるって最高!
2日目。
起きたら雨は上がっていた。
予報では3日目の朝8時から次の悪天。持ち時間はもう30時間を切っている。。
濡れた鉄骨が滑るので結構怖い。
そして正面に見えている脚立がポッキリと折れ、、グラウンドフォールを喫する鈴木…
カメのようにひっくり返った姿をみて、後続は笑いをこらえきれずあやうく立山川に落ちそうになったとか。
谷を埋め尽くす雪渓のスケールに息をのむ。
Go〇gle earthじゃわからないその迫力は一見の価値あり。敢えて写真は少なめにしたので、興味のある方は(もしいたら)ぜひ現地で楽しんでいただきたい。懸念したスノーブリッジはなんとかまだつながっていたが、すでに下界から切り離された空間であることをひしひしと感じる。
ゴルジュを抜ければ広々とした別世界。うっすら雪化粧した山が迎えてくれた!
もう12時間の晴れ間があれば、このあたりで泊まりたかったなー。。
先が長いので、休憩もそこそこに東大谷へ。
ブロック崩壊と落石のなかをびくびくしながら駆け抜けるのかと想像していたが、新雪に覆われた開放的な雪渓。どんどん標高を稼ぎ、それにつれて背後の眺めも開けてくる。谷のど真ん中にいるのに早月小屋と同じ標高というのが不思議。
登山大系では25mとなっている富高ルンゼ出合の滝。ちょっと怪しげなスノーブリッジを伝って、顔を出している最上段へと移る。阿久津さんのリードでここを越えれば、あとは標高差500mの滑り台をひたすら詰めるだけ。
この角度から眺めるチョンラピーク(表紙の写真)は、はるばるこのルンゼにやってこないと眺めることのできないご褒美だ。
次々に見どころが現れてまったく飽きさせない。このルートを見出した初登者に感謝!!
長い長い登りが終わり、中尾根に乗り上げてほっと一息。
ーーーーさて。
ここから登攀が始まる。
トポでは正面(ラインわからん)か右(凹状の草付を登るのだろうか)を登ることになっているが、なんだか脆そうだしヤブがうるさそう。
…左の肩に向かうスッキリした斜面なら?という誘惑に、負けた。
大ザックを背に離陸してみれば、件のスッキリ斜面は歯が立たないスラブ。周りはボロボロ岩と雪解け水でグズグズの草付。おとなしく右へ巻けばよかったと後悔するがあとの祭り。点在するスタンスをつないであみだくじのように登り、やっとのことでハイマツ帯に辿り着く。フォローも落石で1人ずつしか上がれないので、全員が抜けたのは3時間半後。反省…!
落ち着いて見回せば無風快晴、ほんとに素晴らしい天気とロケーション!
絵に描いたような雲海をバックに、目の前に現れる岩稜を無心に辿る、至福のひととき。
いま時間が止まってくれたらどんなにか素晴らしいだろう。珍しくそんなことを考えていた。
チョンラピークを越えればシシ頭はじきだろうとタカをくくっていたので、この区間はとても長く感じられた。正直ナメてました。剱の神様ごめんなさい!
そんな懺悔をよそに、日暮れは刻刻と迫ってくる。夜明けには悪天の予報だ。すでに獲得標高差2000m、誰の顔にも疲れが浮かんでいる。
予定通り山頂で泊まろーか(こっちのほうが近いけど、楽ではないよなー)…
2600mまで下ろーか(悪天の懸念はなくなるけど、疲れているメンバーでは危ないかなー)…
頭のなかで選択肢がぐるぐる回る。
富山平野の田んぼに夕日。私の大好きな眺めも、今日は写真一枚撮って先を急ぐのが精いっぱい。うーん、もったいない…!
ちょうどヘッデンを点ける頃、早月尾根に合流した。
最近のトレースはない、まっさらな雪稜。
嬉しいけれど、トレースがあればサクッと天場まで行けるな、という期待がなかったと言えばウソだ。あくまで試練を与えてくれる。剱の神様は偉大なり。
で、その試練はというと、ゆみこさんの一言であっけなく去った。
「ちょっと下の方に平らそうなところが見えますよ~」
風の来ない平坦地。富山の夜景付き。極上の物件を発見したのだ。やったー
まだ天気は良いので、じゃあテントも建ったしサクッと本峰踏んでこようぜ! というのが正しいクライマーだと今にして思うけれど、この時の僕にはそんな体力も気力も残っていなかった。
完敗だなこりゃ。
3日目。
予報が1時間早まって、下界では7時から雨だという。いざ下界へ。
一晩休んで元気いっぱい。 このところの雨の影響か、下地の出ているところが多くてルートファインディングには苦労しない。また2600mから下は一転して雪が多く、すんなり下ることができた。
いつしか本降りになった雨にも負けず、30時間ぶりに馬場島へ帰還!
あとは温泉! 山海の幸! 渋滞との戦い! 以上!!
今回は天候の制約のなか、きわどい日程でしたが、力を合わせて乗り切れてよかったです。
それにしてもあの晴れ間、夢のような一日でしたね。皆さんありがとうございました!!!
4/29 雨 ⇒馬場島
4/30 ガスのち快晴 馬場島4:10→東大谷出合7:45→富高ルンゼ出合10:30→チョンラピーク取付13:00→シシ頭肩19:00→19:10 2850m幕営地
5/1 ガスのち雨 幕営地5:10→早月小屋7:15→10:00馬場島
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