- 参加者:ボーイ、濵田、小林大
- 行程:0700銅親水公園ー0900ウメコバ沢出合ー1000凹角ルート取付きー1400;3P目敗退ー1500ウメコバ沢出合ー1600銅親水公園
- 装備:カムC0.2-4/2セット、クイックドローx10くらい、トライカム、ナッツ各種
新年1発目を飾るに相応しい山は、宝剣あたりのアルペンチックな雪山を第一候補としていたが、どうにも強い冬型の気圧配置が弱まらないようで、転進先に選んだのは足尾。
言わずと知れた負の遺産であり、敬意に欠くのは承知の上だが、正月の晴れやかなムードのなか訪れるような場所とは言い難いでしょう。
清滝ICを降りて国道122号を行く。市街地に積雪はほとんどなかった。
華やかな観光地である日光とはひと山を隔てるのみで距離にして僅かではあるが、足尾の街に入れば雰囲気は一変。
朝日に照らされているというのもあるだろうか、赤錆色に輝く街並みや数々の廃墟、禿げた山々の情景は、メランコリーな気分を誘うようで我々3人の評価は芳しく無かったが、そこに趣を見出す人にとってみればノスタルジックでロマン主義的な魅力があると言えるのかもしれない。
松木沢周辺は鉱物の採掘そのものにより荒廃したというよりは、煙害や火災などの付随的な影響により、不毛の地と化したようだ。
そんな人間の咎により産まれた過去の遺物で、先鋭的なアルパイン・クライミングが楽しめるというのは何とも皮肉な話である。
アプローチは積雪はほとんどないし、平坦で非常に歩きやすい。
道中、なけなしの植林を見かける。破壊した緑を元の姿に戻すには膨大な時間がかかるようだ。100余年前「近代化」というイデオロギーの名の下で為されてきた功罪をここに垣間見た。
左手に松木ジャンダルムや幕岩なる岩壁が連なった広大な渓谷を歩くこと2時間ほどでウメコバ沢出合に至る。
松木沢周辺はアイスクライミングのゲレンデでもあるというだけに、厳冬期には松木川の上流は凍りつくものだと思っていたが、今回はくるぶしぐらいまでの渡渉となった。
濵田は期待に応えてくれて水没…(-∧-)合掌・・・
ウメコバ沢は出合からいきなり急峻なゴルジュである。
冬の危険な沢登をしばし楽しみつつ、左岸沿いのフィックスロープを辿り1時間ほどで中央岩峰に到着。
中央の顕著なジェードルが今回われわれが目指すルートである。
対岸にも巨岩が連ねる。”日本のグランドキャニオン”の異名に恥じぬ雄大な景観である。
1ピッチ目はHBリード。Ⅴ-級/45m。
凹角に走るクラックを辿る。傾斜は緩く、さして困難には見えないが逆層でアイゼンがうまく決まらず嫌らしかった。
終了点直下のシビアなフッキングが要求される数メートルのスラブが核心か。
2ピッチ目。Ⅴ級。大善さんリード。15メートルほどと短いが、見た目に反して傾斜は強い上にフットホールドは細かく、的確なドライツーリング技術が要求される。
着雪が少ないのでカムは比較的セットし易そう。薄かぶりをこなして終了点に至る。
3ピッチ目。5.10a。HBリード。
フェイスの細かいスタンスを拾いステミングで慎重に高度を上げる。人気ルートだからか、フットホールドにはアイゼン跡があるので、細かさの割には比較的足を拾いやすいかもしれない。
中間支点にハンガーボルトとRCCボルトがあるなど、プロテクションは安定しているので安心してムーブを起こせる。
2本目のボルトをクリップした後にガバにフッキングが決まったと思ったら、ホールドは外傾していたようで、5メートルほどドカ落ち。
今回は諸事情につき、時間の制約があったのでここで終了。
大善さんがトップロープ状態で試登した後、同ルート下降した。
自分が冬季に登ったルートでは、錫杖の左方カンテや御在所の中尾根などと同程度の難易度だと感じたが、今回はテクニカルなドライツーリングが主体となり、神奈川からのアクセスも良くこの手のクライミングを楽しむには格好のゲレンデだと感じた。
夕方5時のチャイムが鳴る前に駐車場へ帰還。冬季クライミングで明るい時間に下山することは、そこまで多くないような気がするので、今回はどこか健全に遊びを楽しんだ感じだ。
今回は完登には至らなかったが、短い時間に関わらず良いトレーニングが出来た。
今月中旬行われる、栃木クライマーズミーティングという楽しげな催しに参加することになり、早速リベンジの機会を伺えれば幸いである。
記: HB
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